文脈の事故

オール・ノンフィクション

20190530

頭の中のタッパー 外してみる ゴム製の蓋を外すとき ぺりぺりと剥がす 剥がした 誰かが米を食ったのだろうか 蓋の裏側に米粒の跡が 一つ二つ三つ かつての米の痕跡が たしかに存在している 米の空隙が 瞼を開けるとわかる 私のようなもの 昔こんな話を聞いた事が無い 地球は自転しているからあなたの影も回転している あなたは何かと問われたら回転する影だと答えられる という話 光源の回転に喜ぶカビがいる 浴室のタイルの隙間にうっすらと生えるカビ 陽光を餌にしている 明くる日の朝に 朝という時間帯がすっかり生活の中から消えたと気づいたその時だ 目の前は単調なリズムを以て 朝の光の中に電車人運転手全てが吸い込まれてしまった時に 人気者の秘訣はなんですかと聞かれた時に 目の前の葉脈と朝露に気づいてしまった時に その時だけ行える儀式がある まず一回転する そして二回高飛びをする 三回お茶をすする動作をしたあと 四回お辞儀をする 以上である 寒さに肌が縮むときに行える儀式 黄色のエムの字の店員に顔を覚えられたときに行える儀式 そんな儀式をして何になるのと聞かれても それは私が私であるためなんですと 心地よく 澱みなく 味気なく 潔く 答える 答えたあとの反応は鑑みない 不気味なタワーに変貌してしまっても笑わない 歩いたら走ったら目を開けたら顔を洗ったらバチが当たるよ とおばあちゃんから言われない 頭をかきむしったらフキノトウならぬフケの糖だよ とおじいちゃんなら言われない 穏やかに死期が近づく音がしていても わたしは絶対恐れない 可愛さを保つ魔法はなんですかと聞かれたときに ホームで独り言をぶつぶつ言うことでしょうか とか言う魔法 墾田永年私財法