文脈の事故

オール・ノンフィクション

2020/03/05

思えば大学四年の春、いくつか内定を持っていた僕は、アール・ブリュットのドキュメンタリーを偶然観た。障害者があまりに生き生きと絵を描いているのを見て(僕はこれから仕事で嘘をついて作るのか。)と泣いた。そのとき大学院に進学して作家として本当を作りたいと思った。あれから二年が過ぎた。

「観客に嘘はついていいけれど自分に嘘をつくな」とある教授が言った。その言葉が今も頭にこびりついている。二年間、会いたい人に会いかけてほしい言葉をかけてもらい見たいものを見るために作った。矢先でも就活しないと金無いしと思って就活したけれど同期の「もし同期のあいつが修了して作家になって有名になっても悔しくないの?」という言葉で歯止めがかかった。

コロナで卒業式は中止になったけれどこれからはずっと続いていく。僕は修了して来秋にベルリンに留学する予定だ。海外留学の奨学生として採用いただいた。それまでギャラリー / 予備校のバイトと留学準備という二足の草鞋の生活を送る。息がしやすいように作れたらいいと思う。