文脈の事故

オール・ノンフィクション

20170826-27

高校を卒業して5年ほど自衛隊に務めたのちに工場働きを始めた男の家に泊まる。添い寝してもらいたかったらしい。
深夜、そいつと会うために小田急に乗る。ガタンと閉まる電車の音。それは、そいつと会うという未来を確約してしまう、もう逃れられない、そんなメッセージの込もった絶望の音だった。町田でのトラウマが蘇る。急に抱きつかれたりするのかな。向かいの片瀬江ノ島行きの終電は通り過ぎ、いよいよおれは逃れられなくなった。電車はそいつの最寄駅に着く。
「そんな震えなくていいよ」。そいつのその一言で、どうてことなかった、しかし溜まりに溜まっていた寂しさが溢れ出しておれはその男に身体を委ねる。罪悪感、そして虚無感が溢れている六畳一間の一室で抱きしめあう。その一室にはテレビが流れていて、たまにゼクシィのCMが流れる。男女が抱きしめ合う結婚式間際のCM。もうおれは正常になれないのだ。そんな絶望感がアパートの一室に満たされる。
添い寝、といいつつも、そいつはいびきをかき始めて、おれは上手く眠れなかった。だから今も眠い。あと今もそいつの家のボディソープの匂いがする。眠い。眠い。眠い。そいつは平日は毎日工場働きで、久々の休暇だったからか、疲れ果てていたらしく。昨日の深夜2時くらいから寝始めて、13時までなんだかんだ寝ていた。いや、腹減るだろ!と思って、お腹すかないんですか?とか訊いたら、どうやら毎日一食主義らしくて、昨晩はサラダチキンしか食べてなかったんだって。へーえ。あとそいつがマッサージしてくれて、それもよかった。罪悪感と虚無感と絶望感はあるけれど。