文脈の事故

オール・ノンフィクション

2020/02/18

あなたの夢を見たよ。明るい夢だった。僕らはいつもと変わらず横浜のバーの端っこで、脚をたまに重ねて、ソーセージとお酒をつまんでほろ酔っていつの間にか暖かな部屋にいた。窓からはビルの赤いランプが見えた。月並みだけどあれが最後だとわかっていたなら、もっと私は涙を流して別れを惜しんでいただろう。あなたは消えた。それはいい話で、ごくありふれた話で、つまらない話。報われない話を報いるために、体からわかるようにするために、あなたからあなたみたいな人へと弔うために、叶わぬ夢を近づけるために、私からあなたに届ける計画です。

2020/02/13

色とりどりの眠気がそこかしこに佇んでた。あたたかな春の兆しがちらほらと顔を覗かせる。誰が彼がどんな終わりを迎えても、皆一様に、はじまりがやってくる。今日多摩川のよく晴れた地面に一匹の猫が、そんな世間話が乾いた洗濯物のそよ風から聴こえてくるようなきがした。いろんな悲しい出来事もいつのまにか通り過ぎていたよ。京都の池からノソノソと這い上がる亀のようにいま電車から一人のおじいさんがノソノソとドアから出ていった。どこへ向かうのかはわからないけれど今日も眠気が包んでくれるだろうと信じて。

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何もかも不謹慎に思えた。それでも日常はやってくるのだと心底思った。伝えるのが辛かった。誰かのお世話にならないように生きたいと思った。それでも私はいま身体という器を前へ動かして歩いて生きていて、耳からギターの撫でるような優しい音が流れていた。いなくなるということが、例えばその人と私の距離が離れたものだったとしても、悲しみ、弔いを想い続けている。時間が流れる。

2020/02/11

オーボエは温度や湿度によって出せる音が違うと小学校の頃に聞いた。そんなオーボエのごとくraspiが上手くいかない。安定した試しが無い。やっぱラテパンダのほうが良かった?月きれいだな〜 安定して動く作品とっとと作りたいんですけど。だいたい展示や講評の前になると、なんでおれこんなにムズい手法を選んだ?と自責の念が募る。最悪です。動かない笑

しかもraspi側かusbかsdカードか原因が掴めてない。専任のテクガイがついてほしい。作品で使う技術に関わらずサックスや恋愛のテクを教えてほしい。てか最近子ども産まれた投稿見て思うのはあんたいつそれ学んだんだ?教えてくれっていう。どんどん追いつかなくなってる。どんどん遅れている。売れ残り。性格が悪いからしょうがないんですが。性格というか性癖含めて人生の総じて全てがアウトオブ眼中的な扱い受けて大丈夫です!

最近は薬の調合のごとく睡眠時間を考えあぐねる時間が楽しい。

2020/02/08

これは嘘です。子どもが生まれた夢を見た。子どもの名前には樹の字を入れようとしていた。自分の人生が人生だったから、子どもはどうなろうとしっかり伸びてほしいと思っていたからだ。名前は親のエゴだ。誰が見ても読める名前にしようと思っていた。当て字ではないこと、そして当時リズム論にハマっていたからもれなく語感の良い名前を差し上げようと奉仕精神が働いた。漢数字を入れようとしていた。

2020/02/03

展示が終わってすっかり休憩をしていた。リハビリ。あらゆる物の。年々悲しい出来事が多くなってるような気がした。あいつのせいで不感症になったはずなのに不器用な縄張りがあった。呼吸の音が一面にこだまする凍った湖畔。そのふもとで僕は湯気のたった珈琲を一杯飲んでいた。正確な時間をひとたび忘れてしまえば、どこかの授業で見たシュレティンガーの猫の箱の図のように、永遠に回り続ける輪廻が僕の体を縛り付ける。あなたみたいな人がいた。あなたみたいな人が沢山いたよ。その中からあなたを探す旅をしていた。でも結局見つけることはできず、ただただ回り続けていた。誰か迎えに来て。何度も言った。特に夜9時頃になると、その兆候は何度も現れた。迎えに来る車や男を何度も想像した。幻想に悩まされているのを止めようと、不確かな輪郭をなぞり続けていた。一研究室の二畳半の与えられたスペースの中で、いともなく回想は回り続ける。

2020/01/25

どこかの人に子供が産まれた投稿を見ると、あぁあなたはそっちの人だったんだ、あなたがそっちの人で良かった、と安心してしまう。少なくともこの国には貢献しているのだから。何が起ころうとも、それは指標から見れば生産的である。今日もたくさんのそっちの人を見れる。今日もたくさん安心できる。

2020/01/22

頭がおかしくならないように自炊をしていた。何もかも輪郭が不確かになるなかで、一番確からしいと信じることができたのが自炊だったからだ。素材はふやけ、焦げ、生煮えになったとしても、食感によってその素材の在処を確かめることができる。