文脈の事故

オール・ノンフィクション

2021/03/19

結婚を見るたび思うのは、まずおめでとうという気持ちと、あなたがヘテロでよかったという安心だった。あなたは正常で、あなたの子どもを持つ自由が、少なくとも僕よりかはある。僕は自らの行く末を考えてた。思い出すのは大学三年のある日、40代のアプリでひっ掴まえたおっさんとドライブして、部屋に行ったらただ広い、田舎にぽつんと佇む男一人、その周囲の何もなさが男の寂しさを際立たせた。それから僕にはそれが将来避けなければいけない孤独に見えて、こういうことを考えるときの原風景として頭によぎる。僕は不安がある。でもそれを考えたところで何もならないよ、と蓋をしてみるけれど、ぐつぐつと泡は沸いていく。僕はたまに、僕が良いと思った男の一人二人がある日突然目覚めて、僕と同じセクシャリティになるのを夢見ている。と同時に、それは怖いことだとも思う。あとたまに思い出すのは、大学四年で少し付き合っていた男のことで、あれはとてつもなく幸せな時間だった。向こうの家に行けば、彼はたまに風呂入ってたり、テレビ見たり、自分もシャワー浴びてベッド行ったらたまたま地震が起こって、いてくれてよかったと言われたその言葉も覚えている。というか記憶が湧き出ている。安心したいし安心させてほしかった。どうなったところで。