文脈の事故

オール・ノンフィクション

2021/08/17

白い銀海に柔い声がウンウンと立ちこめる。形を見逃さないように声を捕まえる。カツンと氷面をめりつぶす。きっと反対側にだれかのなりそこない通称なれかがいる。何にもなれなかったなれかが弧を描いて宙を舞う。吸ってみたら、と仲の良い友人から訊かれた時のあなたをなれかは忘れられなかった。同時になれかが全員Werkzeugとして扱うことにした。道具を意味するWerkzeugはおもちゃを意味するSpielzeugのように、zeugという接尾辞で繋がっているのだから物のような意味がその接尾辞にはあるんだな。だれかのなれかの住みかが屋根裏にある。か、という接尾辞が家のような意味があるようにテメーにテメーの場所がある。

誰がそこにいて何をしていつやった、小学生が何時何分何秒と訊くようにこだまする夏の屏風の幽霊。金銀銅関係なくテメーが一番だ。じゃあな。